Life as Kamino Rui

MtFの私「神野留衣」と、私の現実世界での姿「僕」の二人の日常生活

イノチノイミ

ときどき、なんで生きているんだろう、って思うことがある。

自分という意識って何かな、って考えたり。
何が自分を自分たらしめるのか、って考えたり。

で、結局答えは無いのだろうなぁ、と考える。

その時に思うのは、なんだかすべてが無意味だな、ということ。

たとえば、自分が本当の自分になりたいと考えること。
そんなこと、絶対に不可能だ。
もはや自分は今の自分として生まれ、生きてしまったのだから。
それ以前に、今の自分こそが本当の自分なのではないか?
だって自分という存在はこの自分でしかないのだから。
そう考えると、私の言っていることは無意味なように感じられてしまう。
本当の自分になりたいなんて言ってるけど、結局は「自分のなりたい自分」であるだけなのではないか。
…そんなんじゃない、って言いたいけれど。
何一つそんなことを証明してはくれない。

証明があるからそれでいい、というわけでもないと思うこともある。
そんなのは数学とか論理の世界でしか通用しない。

街中で、小さな女の子が歩いているのを見て、思うこと。
自分は永遠に、同じような記憶を持つことはないんだな、ということ。
たとえ姿形が本当の自分になったとしても、男子であったころの私の記憶は私の一部だ。
それは別に嫌じゃない…嫌かもしれない、よくわからない。
だけど、自分の一部であるから、切り離せない。
でもその部分が、周囲の女子と私の決定的な差になりそうで怖い。

私が死んでも、この世界は回り続けるのかな、と思うと、なんか死んだって良いような気がする。

だって、私は不良品だもの。ソフトウエアとハードウエアが一致してない、欠陥商品だもの。

この先もずっと、欠陥商品だから。

でも、私はそこまで考えた挙句、急に、死にたくないと思い始める。
誰だって同じように、死ぬのは嫌だ。
自分という存在が消えるのは嫌だ。
私は今の自分が私のネイティブじゃないけれど、でも私の存在自身は私だ。
今までいろいろ考えてきて、生きてきて、十数年間一人で悩んできたものを、ここ数年は誰かと共有している。
その記憶が消えるのは怖いことだ。

自分の記憶が消えるのも怖い。
せっかく共有した相手の記憶が消えるのも怖い。

今まで自分が生きてきて、生きてきてしまっただけかもしれないけれど、その生成成果物を失うことは、怖い。

だからヒトは、記録をとるようになった。
記録を。

ふと思ったけれど、これから先もそういった記録、記憶、情報というのは、増えていくに違いない。
そうしたら、その情報を理解するための知識を得ることを学習であると定義するならば、その学習しなければならない情報量というのも増えていくだろう。
そして、学習にはある程度の時間がかかる。
そうすると、いつかは一生かかっても学習自体が終わらない、という結果になるのではないだろうか。
すでに得られた既成概念を習得するだけで一生を食いつぶしてしまう。
そんな世界に生きる意味はあるのだろうか。

まあ、そんな時代はすぐには来ないだろうけれど。

専門分化は悪いことだ、と言っている人々がいる。
たしかに、それは納得できる。
しかし、すべての事柄をすべて学習するのは不可能だ。
だから、今後も新しいことを発見するためには、専門分化が必要になると私は思う。

ただし、それを伝えるということが、専門分野だけに偏った知識では難しいのかもしれない。
やがては、専門外には説明などできないようなものになるのかもしれない。今でもすでにそうなりかけているかもしれないが。

…そう、伝えるということ。
私のような人々が感じる「本当の性別は身体とは違う」という意識は、身体と性別が一致している人にとって、本当の意味での理解ができないものなのかもしれない。

たとえそうだとしても、伝える努力はしなければいけないのだろう。
わかろうとしてくれる人がいる限り、その努力は無意味にはならないはずだと思う。

 

…結局一生この苦しみから逃れることはできないのだろう。

いつもふとした瞬間に、自分ってなんだろうと考えた瞬間、所詮自分は欠陥商品だと思ってしまう。

…たまに、「世界にはもっと苦しい思いをしている人がいる」という話を聞く。
というか、そう言われたことがある。
だから何?我慢しろと。
それは違うのではないでしょうか。

まあ、確かに優先順位は違うかもしれない。
今すぐに自分という意識が消滅するかもしれない人(死にかけている、という意味)よりかは、自分は優先度が低いでしょう。

でも、それとは関係なく、自分の望むように生きられるようになるということは、かなえてもらえてもいいような気がします。

…かなえてもらうのではなく、かなえなければいけないのか。

 

やっぱり、よくわからない。
考えれば考えるほど。

生きるって、なんだろう。
私は、誰だろう。